公的年金への不安が高まっている
年金「100年安心」は、2004年の年金法改正時において掲げられた言葉です。
「100年後であっても現役の平均手取り収入の50%の年金給付水準を確保したい」という試みは成功するのでしょうか?
この2004年の改正でマクロ経済スライドなど、一般の人には理解しづらい仕組みが設けられました。超高齢社会がさらに進展していく中、給付水準を抑えようという理屈はよくわかるのですが、理解できない仕組みというのは大変大きな問題ではないかと思います。
制度をややこしくして、多くの国民の考える力を削ごうとしているようにも見えてしまいます。
多くの人は国が運営している年金制度の仕組みに対して、評価する基準を持っていません。このような時に参考になるのが民間企業で各国の年金制度を分析しているコンサルティングファームです。利害のない公正な判断を行う企業のデータから日本の年金制度が本当に100年安心なのかを考えていきます。
グローバル年金指数とは
グローバル年金指数は、Mercer(ニューヨークに本社を置く、組織・人事、福利厚生、年金、資産運用分野におけるサービスを提供するグローバル・コンサルティング・ファーム)が、世界各国の年金制度のベンチマークとして提供している指数です。
2022年度においては、全世界の44の退職所得制度を比較し、世界人口の65%をカバーしています。
各国の制度の総合指数は、「十分性 (Adequacy)」、「持続性 (Sustainability)」、「健全性 (Integrity)」に大別される50以上の項目から構成され、この3つのサブ指数を加重平均して算出されています。MCGPIは、世界人口の 65% を網羅する44ヵ国の年金制度を包括的に調査されたものです。
- 十分生:給付される年金額が最低限の生活をするために十分な金額であるか?
- 持続性:年金制度のしくみを長く維持していく機能を持っているか?
- 健全性:年金基金(GPIF)の運用が安全性をもとに運用されているか?
このようなサブ指数をもとに総合指数が求められています。
世界第一位の国は北欧のあの国
2021年同様にアイスランドが総合指数84.7ptで第一位です。
アイスランドは、十分生、持続性、健全性ともにすべて80pt以上をマークし、安定的な高い評価です。また、オランダ、デンマーク、フィンランド、ノルウェーなどの北欧諸国が上位に来ています。
日本の順位は35位で、先進国の中で大きく水をあけられた結果となっています。総合指数も54.5ptと、先進国とは思えない低さです。サブ指数の内訳で見て見ると次のようになっています。
- 十分生:58.0pt
- 持続性:44.5pt
- 健全性:63.0pt
これを見てもわかるとおり、持続性の評価が一番低く100年安心には程遠い数値になっています。
もし、100年安心を謳うとするならば、給付水準をもっと下げなければなりません。もしくは、運用利回りを上げるためにリスクの高いポートフォリオに組み替えなければならないかもしれません。しかし、そうなれば、十分生や健全性が下がってしまいます。結果、日本の今の人口構成で年金制度に期待するということは非常に無理があることなのだと思います。
老後資金2,000万円問題
老後資金が2,000万円以上不足することは、2019年に金融庁の金融審査会市場ワーキング・グループ報告書により「老後2,000万円問題」として取り上げられたことで、多くの一般人も知るところとなりました。金融業界に身を置く皆様からすると、「知らない人がいたの?」と驚きを隠せなかったかもしれませんが、金融業界にいない人にとっては、本当に寝耳に水だった人もいるようです。
その後、コロナや国際紛争を原因とした物価高騰で生活にゆとりはなくなっていますが、この老後資金の問題が消えてなくなっているわけではありません。少しでも早く準備し、運用の力を借りなければ手の付けられないことになってしまうでしょう。
では、どのくらいのお金を準備していけばいいのでしょうか?
大変申し訳ありません。続きのコンテンツをご覧になるにはログインが必要です。 ログインはこちら 会員登録はこちら